神楽坂を登り詰めた辺り、ビルの2階、18坪ほどの小さなスペースに、この「だいこんや」がある。狭い階段を上り、玄関を入ると黒いかまどのようなカウンター目に飛び込んでくる。このカウンターは、現場テラゾ研ぎ出し、表面をビシャンで叩き、より素材感を強調し、かまどという懐古的なイメージの中にも素材の持つ美しさ、新鮮さを表現している。
客席は、玄武石の自然石に帯鋸目仕上げの無垢材を絡ませた大型テーブル席と、屏風を思わせる錆鉄板と麻縄を巻き付けたパイプスクリーンに挟まれたテーブル席、そして隅っこには手漉き和紙を張りつめた壁、天井全体を毛深いワラスサ入り土壁を塗り込めた。一室空間にあってスス竹、和紙、石といった素材そのものが持つ美しさ、らしさを表現しながら対比、あるいはバランスさせることで、それぞれの場が独自の雰囲気と居心地感を持つことを狙っている。それらをバルコニーを利用した坪庭、間接照明によってシルエットを楽しむスス竹の林、石の床の間といった情緒的で曖昧な要素でつなぎ、よりその場の独自性を高めつつ広がりのある空間を求めた。
「小さくて広い空間」そして概念的でなく、あくまで空間体験を通して感じられる豊かな空間をつくることを意図している。 |