多くの繁華街から情緒的な界隈性が失われ、新しいビルがそれに取って代わってきている。大阪のキタ、お初天神あたりもご多分に漏れずその様相を呈している。このお初天神に隣接するテナントビルの3階に「すみび家」がある。3階であること、また共用部に面する部分がわずか1間しかなく、隠れ家的な雰囲気が漂っている。靴を脱ぐという行為がさらにそれを強めている。
玄関を入りUターンするようなかたちで空間を展開させ、一番奥の奥座敷まで順次床レベルを上げ、それぞれの領域をつくり出してる。床からの照明で浮かび上がらせたあたかも舞台のような座敷と、炭火焼き台を取り囲むカウンター、この二つのスペースを橋掛かり的なロングテーブルで結びつけている。また和紙や土壁、そして金属といった実体としての素材を用いながら視覚的な変化、あるいは静寂な空間とダイナミックな空間との対比、そして緊張感といった非日常性をこの小さな空間に組み込んでいった。新しいビルの中で、この“隠れ家”的な空間が今後どのように展開していくかが楽しみである。 |