今まで多くのインテリアをデザインしてきたが、自由に発想し表現できる建築空間を与えられたことはほとんどなく、不利な条件を受け入れ、それを逆手に取り未だ見えぬものをたぐり寄せる行為を繰り返し行ってきた。私にとってそのスペースでしかつくり出すことができない空間を求め、表現してきた。今回の店舗はそれとは逆で、3mほどの天井高を持つほぼ正方形に近い平面のゆったりとした申し分のない空間である。折しも考えていた“紬”のような空間を表現するには十分なスペースである。
まず高い天井を持つベーシックな空間を中央部に据え、独特の色と風合いを持つさまざまな自然素材でつくられた居心地のよい空間をそれに絡ませ織り込んでいった。言い換えれば、垂直を意識する空間に視覚としての水平の流れを織り込むことで生じる漂う空気や、人の気配を感じる空間を求めた。「がんこ」は今回が初めての仕事でつい肩に力が入りすぎるのを抑えながらも何とか期待に応える仕事ができたと思っているが、料理内容とサービス面、そして雰囲気のバランスはうまくとれているとは思えない。今後の課題でもある。阪神間の国道2号線沿い武庫川近くにある「がんこ
武庫川店」が、この地域に根ざし繁栄し続けることを願っている。 |